なおブログ

音楽、映像、漫画、小説、レビュー

森恒二『ホーリーランド』

なお

 

 

俺の人生にまあ多少なりとも影響を与えている格闘漫画。

 

 

主人公はいじめられっ子のひきこもり。現実からの逃避行動としてシャドーボクシングに没入することで運命が変わっていく。

 

 

自分の場所をもとめて深夜徘徊を繰り返すユウは、ある日不良に絡まれた所をシャドーボクシングで覚えたワンツーを使って切り抜ける。それからユウは不良のたむろする夜の街へのめり込んでいく。

 

 

この漫画の面白い所は、格闘技に興味のある人間なら一度は思ったことのある、「一番強い格闘技はなんだ?」という疑問に対して明確な答えは出さないものの、かなりエンターテイメント性のある面白い資料を提供してくれる所。あとは、決して良いことをしてるわけじゃないっていうのも単純なヒーロー物になりづらくしていてよき。

 

 

物語は二通りに楽しむことが出来る。ひとつはユウと対戦する不良達が得意とする格闘技が様々で、その度に違う対策や説明があって格闘技漫画として面白いということ、ふたつ目はユウの成長の過程で起こる心理描写。俺は特に後者が見どころだと思う。いじめられっ子を主人公とした格闘技漫画はこれ以外特に知らないけど、ここまでいじめられっ子の防衛本能が過剰な自己武装に繋がりうるということを的確に書いた漫画は無いんじゃないだろうか。「強くなりたい」って思う気持ちの表現がかなりリアル。作者は格闘技経験者らしいが、多分いじめられた経験やそれに伴う心の闇も抱えていそう。いじめられっ子の理想を叶えすぎている。

 

 

社会に認めてもらえないような、いじめられっ子やひきこもりの人って、防衛本能が行き過ぎて攻撃性が高まるきらいがある。ユウも劇中で何度も獣モードになってるし、はたから見たらただの情緒不安定のヤバイ人なんだけど、自分にはすごく分かるってやつ、かなり多いと思う。そんな人は一度読んでみたらいいんじゃないだろうか。なんか変わるかもよ。

 

 

なお